【vol.102】少年たちは、「永遠」の夢を見た。古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』

-古本屋ATrACT-漫画図鑑vol.102

ライチ☆光クラブ

衝撃の舞台、禁断のマンガ化

1980年代。暴力や血を題材とした耽美な劇を発表した劇団’東京グランギニョル‘。
「グランギョニル以上の衝撃的な演劇はない」と、古屋兎丸は語った。
彼らの発表劇は四作のみ。しかしその影響力は絶大であったという。
この漫画は、そんな伝説の劇団’東京グランギニョル’の舞台の1つである『ライチ光クラブ』を、鬼才・古屋兎丸がマンガ化した禁断の衝撃作。

少年たちの、美しき夢

工場の煙に覆われた螢光町の片隅にある、「光クラブ」と名づけられた少年たちの秘密基地。
その場所で、とある目的のために作られた「機械」が目を覚ました…

少年たちの危うい関係性

光クラブを仕切るのは、廃墟の帝王・ゼラ

(出典:古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』)

彼のカリスマ性は凄まじいものであり、彼の絶対王政で光クラブは支配されていた。

ゼラに心酔する少年。ゼラに反発する少年。ゼラを愛する少年。
彼を中心に、様々な思惑が光クラブ内を交錯する。

その危うすぎる関係性から、目が離せなくなってしまう。

機械の魂と少女の魂

そんな彼らの関係性に一石を投じるのは、
彼らによってつくられた希望のロボット・ライチと
ライチによって捕らえられた美しい少女・カノン。

(出典:古屋兎丸『ライチ☆光クラブ』)

少年たちの命令でカノンを捕らえたライチであったが、
カノンと触れ合う度に、機械から徐々に「人間」に近づいていく

少年だけで結成されていた光クラブに、
少女と機械がどのような化学反応をもたらすことになるのか…

永遠に美しいままに…

少年たちの崇高なる目的の最終地点は、「永遠」。
大人を穢れた存在として侮蔑する彼ら。その姿は、儚くに私たちに訴えかけてくるだろう。

永遠に少年で、美しいままに…

しかし、人は必ず「大人」になる

彼らの無謀すぎる計画は、破綻の道筋を辿るしかないのか。

未完全な「少年」故の過ち。
「美しさ」と隣り合わせの「醜さ」を見つめたクライマックス、
彼ら光クラブの「最期」は余りにも耽美であった。

なんというグランギョニル(残酷劇)だ!!

かつての美しき少年・少女に贈る、耽美なる演劇漫画、ここに開幕。

総評:75%
オススメ度:★★★☆☆

作品データ
タイトル:ライチ☆光クラブ
作者:古屋兎丸
原案:東京グランギニョル『ライチ光クラブ』
巻数:全1巻
発表年:2005~2006
掲載:マンガ・エロティクスF
出版:太田出版