-古本屋ATrACT-漫画図鑑vol.103
ミリオンジョー
大人気漫画家、急死。
最新刊の初版部数が500万部を超えるなど、数々の記録を更新し続け、
多くの人々に勇気・希望・興奮を与える少年漫画の金字塔『ミリオンジョー』。
その作者・真加田恒夫が連載中に急死した。
担当編集者・呉井は、続きを楽しみに待つ読者の為、そして自分の為、
真加田の死を隠蔽し、自らが続きを描くことを決意する……!!
絶妙なリアリティ
上記、大人気漫画『ミリオンジョー』という漫画の設定を聞いた時、何かが頭をよぎらなかっただろうか。
…そう、現代の国民的大人気漫画『ONE PIECE』のことが…!!
この漫画においては、『ミリオンジョー』を『ONE PIECE』に置き換えていただきたい。
『ONE PIECE』のコミックスが一巻刊行されるだけで何億という金が動き、更にはTVアニメ・映画・ドラマ・ゲーム等のメディアミックス、フィギュア・アパレル等のグッズ展開…
現代において、『ONE PIECE』は漫画界のみならず、日本の、いや世界の経済を動かしていると言っても過言ではない。
『ONE PIECE』の掲載が一話遅れてしまうだけでも莫大な損害が出てしまうのに、
作者が死んでしまったなんてことになったら、もう大騒ぎどころの騒ぎではない。
この作品は、現代における大きくなり過ぎた漫画の影響力に真正面から向き合った。
その絶妙なリアリティを孕んだストーリー展開にゾクゾクしっぱなしだ。
危な過ぎる綱渡り
『ミリオンジョー』作者・真加田の突然の死を隠して、連載を続けることを決意した担当編集者・呉井。
真加田が書き残したストーリーノートを参考にネーム(漫画の下書き)を描き、チーフアシスタントに画を付けてもらうという寸法だ。
……危なっかし過ぎる…!!
初っ端で作者コメントの違和感がネットで指摘され、アクションシーンの画の違いや細かなクセも見抜かれ…熱狂的なファンは怖い。そんなとこ普通気付かんって…
他にも、コラボ企画での面会の必要性や人気アンケートの急降下、半ストーカー行為による住所バレ等々…
漫画執筆・雑誌掲載外にもピンチは盛りだくさん。
もう、見ていられない程の綱渡りの連続。見てるこっちがハラハラしっぱなし。
大人気漫画家に成りすますのは本当に容易なことではありませんので、みなさんは決して真似しないように。
最後に漫画愛は勝つ
成りすましサスペンスとしてのハラハラドキドキ感もさることながら、この作品から痛いほど伝わってきたのは、
漫画愛。
経済効果とか責任感とかお金儲けの為とか…作者の死を隠蔽してまで『ミリオンジョー』の続きを描き続けるオトナの事情的な理由は多過ぎるほどあるのだが、
結局のところ
多くの人々の希望である『ミリオンジョー』を未完のままで終わらせるわけにはいかない!!
というアツい魂が原動力になっていたところが素晴らしい。
多くの謎を残す『ミリオンジョー』の続きを楽しみに待つ読者の為に、『ミリオンジョー』を生きる希望にしている読者の為に、そして、自らの漫画愛に突き動かされ…
幾多の困難を乗り越え、呉井は最終回へのネームを描き続ける…!!
漫画を愛した故の暴走行為。
その果てに彼を待ち受けるものとは…!?
総評:91%
オススメ度:★★★★★
タイトル:ミリオンジョー
作者:市丸いろは,十口了至
巻数:全3巻
発表年:2013~2014
掲載:モーニング
出版:講談社