-古本屋ATrACT-漫画図鑑vol.86
何もないけど空は青い
作者:飯沼ゆうき,西森博之
巻数:全7巻
発表年:2014~2015
掲載:週刊少年サンデー
出版:小学館鉄は文明の根幹。それがなくなって…
隕石の影響で“鉄”を失い
普通に暮らすことが許されなくなった世界。
東京から200km離れた地方都市に住む男子高生、
河守仁吉(かわかみ じんきち)が真っ先に浮かべてしまうのは
同級生・七ノ宮華羅(しちのみや から)のコトだった。
その華羅も仁吉のことを…!?
誰もが絶望し悲観する中、人生の目的を強く持つ2人の生き様は?
「鉄」が無くなる。
想像してみてください。
いま見ているこのパソコンやスマホはもう使えない。
テレビももちろん使えない。
移動するにも自動車・電車、はたまた自転車までも使えない。
電柱・電線もなくなってしまうので明かりも使えなくなります。
結論。とんでもなくやばいですね。
これは、突然「鉄」のなくなったとんでもなくやばい世界で人々はどう生きるのかを描いた物語だ。
「鉄」というたった一つの物質が無くなる。それだけで世界はあんなにも変わってしまう。
このワンアイデアは本当に面白かったし、すごくワクワクした。
本作で強く描かれていたのは、極限状態における人間の本質。
情報も食料も途絶え、警察機能も崩壊した世界。
そこに現れるのが人間の本性。
「自分で考えないよう馴らされていた市民は…
文明を失いつつある世界に道標もないまま放り出された。」
自分が生き延びるためなら何でもする。自分のことしか考えない。
自分だけでは何もできない。何か、強大な力に縋る人々。
そんな人間が蔓延るなか、主人公たちは強く自分の信念を突き通せるのか。
まーとにかく主人公が真っすぐ過ぎるんですよね。
その真っ直ぐさ故に何度も何度も危機に晒されるわけですが。
主人公が良いヤツ過ぎるのに対して適役はクズ過ぎる。どいつもこいつも。
人間としての葛藤、本質がこれでもかってほどに描かれています。
…それはそれとして、肝心の「鉄が無くなった世界でどう生き延びるのか」という点については投げやりすぎです。
どちらかというとこっちに期待していたのに…
序盤・中盤こそそういうサバイバル展開でも楽しめましたが、
終盤は精神論的な展開ばかりで全く面白くなかったです。
ので、この漫画は極限状態における人間の本質を楽しみましょう。