【vol.94】この町で、誰がすくい 誰がすくわれるの――?『金魚坂上ル』

-古本屋ATrACT-漫画図鑑vol.94

金魚坂上ル

作者:PEACH-PIT
巻数:全5巻
発表年:2012~2015
掲載:デザート
出版:講談社

坂ばかりの町で人助けをする“すくい屋”をしながら、大切な思い出のカケラを集めている、にしき。優しい幼馴染の蒼馬は、いつもそばで見守ってくれている。ある日、話し相手を依頼された少女・朱とその兄の紺との出会いが、彼女の心の奥にしまわれていた記憶の扉を開け放っていく・・・。 紺は、幼い頃ににしきが出会ったキツネのお面の少年? 蒼馬は本当に幼馴染なの? 次第にわかっていく、にしきのあるヒミツとは――!?

「わたしね 小さい頃 金魚すくいを 金魚救いだと思ってたんだ」

 

坂ばかりのこの町で何でも屋「すくい屋」を営む女子高生・にしき。
7年前の水難事故が原因で、記憶を留めておくことができない彼女は、
「すくい屋」を営みながらこの町の思い出のカケラを集めて回る。

あの日、にしきが落とした金魚をすくってくれた「きつね(の仮面)の男の子」に再会するために。

 

ノスタルジック×神秘的な雰囲気に惹き込まれる。

金魚・神社・坂道・老舗…
物語の舞台は、下町情緒の溢れる深郷町。

そこに、金魚すくいをはじめとする数々の美麗な「水」のイメージ、
思い出の「カケラ」の輝き、
自らを狐だという不思議な兄弟のミステリアスさがマッチング。

光を水面が反射するようなキラキラと輝く幻想的な雰囲気にまず惹き込まれてしまいます。

 

記憶をなくす女の子。その秘密を解き明かす物語。

物語序盤、ちらちらと謎を仄めかしながらも、

ただひたすら一生懸命に「すくい屋」稼業に励むにしき。可愛い。

ほのぼの系の物語なのかなぁ、そんなことを想っていた矢先…

あの子も不憫なもんです こうしてカケラを繋ぎとめておかないと

じきに またバラバラになってなくしてしまうんですから……

衝撃的で、小さな悲鳴が漏れました。

得も言えぬホラーな雰囲気を纏いはじめる物語。

一生懸命に集めた思い出のカケラも、新たな出会いから生まれた幸せな日々も、

にしきは、いつか失ってしまう。

その謎を解くカギは、「きつねの男の子」が握っている。

何故か記憶から消えない優しい人・紺。
にしきのことを大切に見守る幼馴染・相馬。
初恋の人はにしき。過去を知るもう一人の幼馴染・若葉。

いったい、誰が「きつねの男の子」なのか。そして、7年前の水難事故の真相とは。

この町で、誰がすくい 誰がすくわれるのか。

総評:74%
オススメ度:★★★★☆