-古本屋ATrACT-小説図鑑Vol.20
ベン・トー サバの味噌煮290円
作者:アサウラ
発表年:2008
出版:集英社ビンボー高校生・佐藤洋はある日ふらりと入ったスーパーで、半額になった弁当を見つける。それに手を伸ばした瞬間、彼は嵐のような「何か」に巻き込まれ、気づいた時には床に倒れていた。そこは半額弁当をめぐり熾烈なバトルロワイヤルが繰り広げられる戦場だったのだ!その不可思議な戦いに魅せられた佐藤は、そこに居合わせていた同級生・白粉花とともに半額弁当の奪取を試みるが、突如現れた美女、「氷結の魔女」に完膚なきまでに叩きのめされる。そして、その美女が佐藤に告げた言葉は…。第5回大賞作家の新境地、庶民派学園シリアス・ギャグアクション、開幕。
「需要と供給、これら二つは商売における絶対の要素である。
これら二つの要素が寄り添う流通バランスのクロスポイント……その前後に於いて必ず発生するかすかな、ずれ。
その僅かな領域に生きる者たちがいる。
己の資金、生活、そして誇りを懸けてカオスと化す極狭領域を狩り場とする者たち。
――人は彼らを<< 狼 >>と呼んだ。」
そんなそれっぽいカッコいい出だしで物語は始まるが…やってることは要するに半額弁当の奪い合いである。
バカだ。くだらない。
あなたはそう思うかもしれない。
だが、そのくだらなくてバカバカしいことに情熱を・時には命をも懸ける彼らの姿は、あまりにも美しかった。
争奪戦というのは、比喩などではなく、本当に殴り殴られ、吹っ飛ばされ、流血し…といった具合である。スーパーの弁当コーナーで。
だが、ただ暴力で半額弁当を奪い合うだけではない。敵の思想を見抜き、その隙をつく。争奪戦時の頭脳戦・心理描写には目を見張るものがある。よくもまあここまで熱く描けたものだ。
日常部分のノリ・テンションの高さには正直引いた。
「お前にとって半額弁当はただ売れ残って古くなった弁当でしかないのか?」。
続編に期待大!!